藤谷治さんの作家デビューまでの道のりはちょっと変わっています。
会社員を経て、1998年に東京・下北沢に本のセレクト・ショップ「フィクショネス」をオープンさせました。
その後、書店経営のかたわらに創作を続け、2003年に『アンダンテ・モッツァレラ・チーズ』(小学館)で作家デビューを果たしました。
今回は、そんな藤谷治さんの「下北沢」を読んだ感想や、おすすめしたい理由についてをご紹介していきたいと思います。
最後までゆっくりとご覧くださいね!
藤谷治の「下北沢」を読んだ感想について
早速、藤谷治さんの「下北沢」を読んだ感想についてご紹介したいと思います。
人間がごちゃごちゃとして騒がしくて、妙な熱気が漂っていてささやかな恋の予感もある街。
主人公の勇がこう表現しているのは東京都世田谷下北沢、多くの若者たちが夢を追いかける場所でもありこの小説の舞台でもあります。
「夢」といえばこの勇も長い会社勤めでようやく貯めたお金を、開店資金ですべて使い切ってしまったばかり。
貯金こそすっからかんになってしまったものの、その代わりに小さなお城と大いなる自由を手に入れてとても嬉しそうでした。
そんな彼が次に求めるのは生涯寄り添えるパートナー、その白羽の矢が立ったのが翻訳家をしている桃子さん。
背筋がすっと伸びて凛とした歩き方、ほっそりとした体型なのに弱々しくないのは芯の強さを秘めているからかもしれません。
帰国子女でE・M・フォースターを原文で読破している桃子、英語コンプレックスでフォースターが何をした人なのかさえよく分からない勇。
まるっきり価値観も趣味嗜好のベクトルも違うこのふたりが、順調にお付き合いを重ねて距離を縮められるのか心配になってしまいました。
それでも不器用な勇のことを後押ししたいような気持ちになるのは、好きになった相手には飾らずにとことんぶつかっていくから。
この本を閉じて物語が終わった瞬間に見えたのは下北沢の街並み、路地裏で談笑する冴えない店主と美しい女性客の姿です。
藤谷治のプロフィールや経歴について
ここでは藤谷治さんのプロフィールや経歴について見ていきたいと思います。
プロフィールについて
- 名前:藤谷治
- 本名:ペンネームと同じ
- 年齢:60歳(2024年9月現在)
- 生年月日:1963年11月23日
- 出身:東京都
- 身長:非公表
- 血液型:非公表
経歴について
洗足学園高校に通っていた1年生の時に音楽を始めるものの、すぐに限界を感じたという藤谷さん。
日本大学芸術学部に進学してから映画学科でシナリオを専攻するものの、こちらも制約についていけません。
いったんは創作活動から身をひいて、下北沢で「フィクショネス」という本屋をオープンしたのが1998年のこと。
8年後に本書を書き下ろし、2003年40歳の時に第1作「アンダンテ・モッツァレラ・チーズ」を発表しました。
この年に「あおい」でデビューした西加奈子さんとは同期、担当編集者も同じということで公私に渡って親交が続いています。
2008年には「いつか棺桶はやってくる」を刊行、これ以降は純文学よりもエンターテイメント性を重視した作風です。
藤谷治の主な代表作品
藤谷治さんの主な代表作品をいくつかご紹介します。
- 睦家四姉妹図
- あの日、マーラーが
- ヌれ手にアワ
藤谷治の「下北沢」はこんな人におすすめ!
最後に藤谷治さんの「下北沢」をおすすめしたい人や理由についてご紹介します。
7時半にオヤジだらけの電車に詰め込まれて、9時出勤なのに8時45分にこないといけないプレッシャー。
コンピューター関係の仕事をしていた頃の勇の暗澹としたエピソードで、世の中のサラリーマンの皆さんには共感できるでしょう。
現在の勇は「箱貸し」の雑貨屋を切り盛りしていますが、要するに店内に設けられたレンタルスペースのこと。
店舗の1区画を月々いくらかで貸し出して、借りた人はそこで自分の売りたいもの売れるという画期的なシステムですね。
経営者は敷居が高けれど物作りがしてみたいという方や、駆け出しのアーティストはぜひ参考にしてみてください。
仕事の合間にはヒロイン・桃子さんと映画を観に行ったりランチをしたりと、プライベートも充実している勇。
下北デートのガイドブックとしてもピッタリな1冊です。
まとめ
今回は、藤谷治さんの「下北沢」についてご紹介しました。