今回ご紹介する筒井康隆さんの「にぎやかな未来」は、ブラックユーモア溢れるSF短編集の中の1つ。
筒井さんの独特な作風に思わず引き込まれてしまいますし、執筆当時に近未来がどんな風になっているかを想像しながら書かれているかと思うと、本当に発想力が凄いと思います。
「SF小説を読んでみたいけどどれを読んだら良いか分からない」という方は、是非一度チェックして頂きたい作品です。
私自身が読んだ感想やおすすめしたい理由についても紹介していますので、参考にして下さいね!
筒井康隆「にぎやかな未来」を読んだ感想について
まずは、筒井康隆さんの「にぎやかな未来」を読んだ感想をご紹介したいと思います。
舞台となるのは世の中の何もかもがオートメーション化した近未来の日本、主人公は「おれ」としか名乗らない若い男性。
機械がすべてをやってくれるために、人間は働かなくても暮らせるようになったという設定は皮肉が利いていますね。
初版が発行されたのは1968年の8月1日、いまから50年以上も前の物語ですが新鮮さは失われていません。
さらには来るべきAI時代の波を豊かな想像力と鋭い感性によって、いち早く予言していたとも言えるのではないでしょうか。
政府によって建造された超巨大型タワーマンション、その中にある「無職独身者用」という一室で寛いでいる主人公に笑わされます。
朝昼晩の3食がベルトコンベアによって運ばれてきて家賃もタダ、何ともうらやましいご身分ですが、ただひとつ悩まされるのは壁に埋め込まれたステレオ・プレイヤー。
高齢者と失業者が次々と増加しているというこの時代において、税収減による財源の枯渇は深刻な問題です。
そこで思いついたのは公共放送にスポンサーを付けること。ですが、30秒に1回はCMが入るためにうるさくて仕方ありません。
気分転換のために外に出て街中を散歩していても、宣伝マンやコマーシャルガールに余計なものを買わされてしまいます。
欲しいものは何でもすぐに手に入る未来において、もっとも高価なものが「〇〇」だったというオチもお見事でした。
※「○○」はネタバレになってしまうので、ご自身で是非読んで確かめて下さいね!
筒井康隆のプロフィールや経歴について
筒井康隆さんのプロフィールや経歴についてもご紹介します。
プロフィールについて
- 名前:筒井康隆
- 本名:ペンネームと同じ
- 年齢:89歳(2024年9月現在)
- 生年月日:1934年9月24日
- 出身:大阪市北堀江
- 身長:166センチ
- 血液型:B型
経歴について
物心ついてすぐに田河水泡の「のらくろ」にハマってしまい、自作のマンガを描いたり雑誌に投稿していたそうです。
春日丘高等学校に進学する頃にはマルクス兄弟のサイレント映画、「エノケン」こと榎本健一の喜劇映画に夢中に。
同志社大学文学部を卒業後にデザイン事務所に就職した頃からSFの執筆に取り掛かり、江戸川乱歩に認められて「お助け」で商業デビューを果たしました。
戦後の偽善から監視社会の危険性までと幅広いテーマを扱っていて、時には過激な作風で賛否両論を巻き起こしています。
筒井康隆の主な代表作品について
筒井康隆さんの主な代表作品です。
- ベトナム観光公社
- 夢の木坂分岐点
- 旅のラゴス
筒井康隆さんは、世相を鋭く皮肉ったブラックユーモアの溢れる作品も多く執筆していて、身近な社会問題を取り上げている作品も見受けられます。
また、映画化・ドラマ化・アニメ化された作品も多いのも特徴と言えるかもしれませんね。
今回ご紹介している中の1つ「旅のゴラス」は旅が主題となっているので、旅に出たい方にも読んでもらいたい作品です。
筒井康隆「にぎやかな未来」はこんな人におすすめ!
最後に、筒井康隆さんの「にぎやかな未来」をおすすめしたい理由をご紹介します。
話題のベストセラーや流行りの映画化・テレビドラマ化原作本に、物足りなさを感じている皆さんは是非とも手に取ってみて欲しい作品です。
大手出版社によるコンプライアンスの重視、日本ペンクラブによる差別用語の使用禁止徹底、小説家個人による表現の自主規制… 当たり障りのない作品が多くなっているこのご時世に対して、反旗をひるがえすかのような筒井康隆さんのブラックユーモアには度肝を抜かれてしまうでしょう。
かつては星新一と小松左京を合わせて「SF界の御三家」と称えられていましたが、その3人のうちの最期の生き残りでもあります。
80代の後半に差し掛かっても衰えることのない創作意欲は、今の若い人たちが読んでも大いなる刺激をもらえますよ。
まとめ
今回は、筒井康隆さんの「にぎやかな未来」を読んだ感想やおすすめしたい理由をご紹介しました。
「にぎやかな未来」は、様々な未来を描くことで現代社会を皮肉る、筒井先生ならではの世界観となっています。
「我々の進むべき道はこれで良いのか?」
「本当に間違ってはいないのか?」
など考えさせられますし、風刺が効いていて、実に痛快な内容となっています。
読んだことがないという方は、是非一度手に取って頂きたいと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。